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誰でもUXを意識できるようにするための「自主トレーニングのススメ」と、それを後押しする「UX探検隊」

この記事はモバイルファクトリー Advent Calendar 2020 13日目の記事です。


はじめまして! とあるチームでUX・UI周りを担当しているデザイナーのid:yux_0_0です。
今日の記事では、職種に限らず誰でもUXを意識できるようにするための「自主トレーニングのススメ」と、それを後押しする「UX探検隊」についてご紹介します。

はじめに

本題に入る前に、私がUXの世界とどう向き合っているかを軽く書かせていただきます。

私のデザイナーとしてのキャリアは、紙媒体のデザインが主な仕事の小さなデザイン事務所から始まりました。
数年かけてデザインの基礎を身につけた後にweb系企業に転職し、FlashでActionScriptを書いたり、グラフィックデザインやwebデザイン等を担当してきました。

モバイルファクトリーに入社してからもしばらくはグラフィックデザインとUIデザインをメインで担当していましたが、数年前にUXの世界に触れて「難しいけど面白い!」と感じ、それからは現場で試行錯誤しながらUXに関わる仕事をやり続けて今に至ります。

解決すべき問題に対してたくさん考えて答えを見つける事が、難しいけれど面白くて好きです。
そして作ったものがリリースされたあとのユーザーさんたちの様子を見たり、自分でイベントをやりに現地にいったときの楽しさと嬉しさといったら!

やるべき事もやりたい事も多くて大変ですが、日々頭を抱えながらもワクワクしています。
「いいものを作れるようになりたい」というシンプルかつ壮大な気持ちを原動力にして、「デザイナー」という枠にとらわれず、興味があることに手を伸ばして日々現場で走り回っています。

自主トレーニングのススメ

そんな感じで日々テンション高く仕事をしているのですが、UXというものはどうしても「何をやっているのか分かりにくいし専門的で難しそう」と思われがちです。

「UX」という名称がついた書籍やwebの記事などでは専門的な用語や様々な手法が多く紹介されているのですが、実はUXの基本は「深く考えること」です。
もう少し詳しくいうと「色々なケースを想定して色々な方向から物事を見ること」なのですが、これは職種や経験に限らず誰でも意識できることです。

なのでいつも「職種限らずUXを意識できる人が増えたら、チームでも会社でももっといいものが作れるようになるはず」と思っていました。
「もっとみんなで深く考え、自社サービスを良くするための意見を活発に交わしたい」と。

ですが今まで意識していなかった人からすると「何から始めたら良いの?」と思うはず。
そこで今年の夏、社内向けドキュメント『UXを意識した現場のお仕事紹介と、自主トレーニングのススメ』を公開しました。

「現場のお仕事紹介」では自分がやっていることについて、専門用語を使わずどの職種でも理解できるように説明しました。
「自主トレーニング(以下、自主トレと表記)」は普段仕事でやっている内容を応用したものです。考える時の基礎体力をつけ、問題解決のため自分で深く考えられるようにするのを主な目的としています。

自主トレのやり方

自主トレは次の3つのステップで行います。

STEP1. 見るものを決めます

  • 自社サービスだと答えを探す方に意識がいってしまうので、自社サービス以外を推奨します

STEP2. ターゲットと目的を考えて箇条書きにします

  • 「ターゲットはどの層なのか」と「この施策の目的は何なのか」を考え、思いついたものを書きだしてみましょう
  • すぐに思いついたものを書くだけでOKです

STEP3. 箇条書きにしたものに対して自問自答します

  • STEP2で書いたものに対して「本当にそうなのか?」「なぜそう思うのか?」と自問自答し、その理由と考えつく限りの可能性を書き出します
  • 書き出すものが無くなったら終了!

このドキュメントは公開直後からたくさんの反響をいただきました。以前モバファクブログでも紹介されたので、タイトルに見覚えがある方もいるかもしれないですね。

UX探検隊、はじめました

ですがその後も「自主トレをやってみようかな」「自主トレを始めたよ」という声は聞こえてきませんでした。あんなにたくさんの反響をいただいたのにどうしてだろう…と考え、たどり着いたのは「おそらく始めるきっかけがないから」。
じゃあきっかけになるような会をやろう!と考え、10月に誕生したのが『UX探検隊』です。

モバファクUX探検隊

UX探検隊とは

  • 少人数(最大6人)で自主トレの内容を見ながらワイワイと話す社内勉強会
  • 参加条件は、自主トレの内容を持ってきて当日共有するということだけ
  • Google Meetを使ったビデオ会議。2週に1回、1時間開催

私が隊長で、毎回募集する参加者はゲスト隊員と呼んでいます。 ゲスト隊員が探検の下準備(自主トレ)をして、UX探検隊の時間にみんなでその内容を探検する(深堀りする)というものです。
自主トレのテーマや形式は自由です。できるだけ決まりごとを無くして参加しやすくしています。

「UX探検隊という勉強会を始めます!」と発表した日、「自主トレ始めようかな」という声が聞こえてきました。「さっそく効果が出たかも」と嬉しくなりました。その後、数回開催しています。

探検のときにやっていること

UX探検隊では、議論をしたり何かの結論を出すことなどはしません。専門用語の解説などもしません。ただただ「なぜだろう?」と想像して意見を交わし合うだけの時間です。

現状、探検のテーマに選ばれるものはソーシャルゲームが多いですが、気になるテーマとして以下を挙げているゲスト隊員もいました。どれもとても面白そうです!

・ 日頃めちゃめちゃ使っているコマンドラインツールのUI/UXとは?

・ ブラウザのタブの位置

・ 自転車のトップチューブの形

ある日の探検の様子をご紹介

基本的には上で紹介した「自主トレのやり方」に沿ってドキュメントを準備してくれる隊員が多いです。当日はそのドキュメントを画面共有してもらって、探検スタート!
ここからご紹介する内容は隊員の自問自答の様子なので、こういう考えもあるよね、という認識で読んでいただければと思います。 詳しい内容を書くととても長くなってしまうのでほんの一部だけですが、雰囲気が伝われば!

STEP1 見るものを決めます

とあるゲスト隊員が選んだテーマは「ゲームの武器・キャラクターなどの編成画面」。
自身で遊んでいるゲームの中からバトルシステムが異なる2つのゲームをチョイスしたとのこと。知らないゲームもあったので画像付きで軽く説明してもらいました。

STEP2 ターゲットと目的を考えて箇条書きにします

3つの視点から考えた内容を話してくれました。

編成画面があるゲームってどんなことを楽しんでほしいのだろう?
・ ターゲットは編成が億劫ではない人?
・ 編成を楽しんでもらいたいと思っている?

編成は課金へ直結している?
・ このゲームは強い編成が組みたいならガチャを引かないといけない
・ もう片方のゲームはこのキャラクターで戦いたいから編成に入れるという感じ

編成でコミュニケーションが生まれる?
・ 編成の構成などを共有することが多い
・ そういうコミュニティの場ができるのを運営は狙っているかも

遊んだ感想も交えつつ、掘り下げた様子をたくさん話してくれました。初の自主トレ挑戦にもかかわらずSTEP2からものすごく深堀りしてくれています!
隊長の私も、自分が遊んだゲームの例を話したり、自分のスマホに入っているゲーム画面も確認しながら話を進めていきます。

STEP3 箇条書きにしたものに対して自問自答します

ここからが自主トレの大事なところです。「なんでそう思ったか?編」と「本当にそうなのか?編」というふうに分けて話してくれました。
自問自答に慣れていないと考え中に迷子になりがちなので、こうやって項目を分けて考えるのは良い案ですね。

自問自答の様子を1項目だけ抜粋します。まずは「なんでそう思ったか?編」から。

お題:編成画面のあるゲームのターゲットが「編成が好きな人」とか「そういうのが億劫ではない人」ってホントなの?

このゲームは編成が重要だから編成が好きとかじゃないとついていけないかもしれない
↓
ランキングの上位とかに行きたいなら、対戦相手に合わせて編成を変えるとかを毎日しないとダメだから
↓
でも「編成無理!わからない!」って言ってた人が必ず離脱するかというとそうではなさそう
↓
それでも続けているって言うことは、編成に対して自分なりの答えを出せるってこと。得手不得手あれど、そういうことができる人だと思う

次は「本当にそうなのか?編」

お題:編成画面のあるゲームのターゲットが「編成が好きな人」とか「そういうのが億劫ではない人」ってホントなの?

このゲームはこういうキャラクターが好きな人がターゲットでは?
↓
編成が嫌いな人は出来ないかって言うとそんなことはない
↓
どちらかというと編成要素は薄いのでは?
↓
正直ステージをクリアしたいだけなら必須じゃないし、編成するにしてもやはり考えることは多くない
↓
気軽に付け替えて自分なりの遊び方を見つけるのがこのゲームのように感じる

これを聞きながら「ちゃんと自問自答できている!」ってすごくワクワクしました。

そしてゲスト隊員がたどり着いたのは

編成要素っていうのは一番強い引きの部分ではないけど、ゲームを盛り上げる要素の割と重要な部分っぽい

という考え。最後に、自主トレに対してこんな感想をいただきました。

自問自答の部分では、頭の中で会話しているうちに、結局最初の意見が勝ってしまうので、反対意見をだすのがなかなか大変でした。

最初の意見で終わらせず、深く考えるための自主トレです。なので最後までちゃんと自問自答してくれたことに「パーフェクト!」という印象を抱きました。
参加した他の隊員からも「初回でこれはすごい!」という声があがっていたのが印象的でした。

考えることを楽しんでもらえたら嬉しい

探検中は思ったことをどんどん発言するように心がけています。そしてゲスト隊員にも発言することを推奨しています。

ビデオ会議だと「誰かの話を黙って聞くだけ」になりがちです。
それも悪いことではないのですが、UXの現場では複数メンバーで話しながら何かをスピーディーに作り上げていくこともよくあります。なので思ったことをその場で伝えるのはそのトレーニングにもなります。
人数が多いと発言するタイミングも難しくなるので、それも考え少人数にしています。

また、それに加えて私は純粋に考えることが楽しいと思っているのでそれも伝えたくて。
「面白い!」「すごい」「へえ」「なるほど」「どうしてだろ」「これも深堀りしたら楽しそう」などなど、シンプルな言葉ですが合いの手を入れるように発言しています。

UX探検隊に参加した隊員の声を一部ご紹介します。

・ 楽しかったです!

・ 一個書き始めたらあっという間に時間が経った

・ 考えがどんどん深堀りして止まらない

・ まとまりなく喋ったのですが、うんうんと聴いていただけて話しやすかった

UX探検隊をやるときはいつも、「考えることって楽しいな」「こんな視点から見ることもできるのか」という気づきを持ち帰ってもらえたらいいなと思っています。 なのでこういう声を聞けただけでもUX探検隊を始めた甲斐があったな、と嬉しくなりました。

12/4のアドベントカレンダーで紹介された「UX定例会」は実務的な話をする場所ですが、UX探検隊は「UXってなに?」という人でも身構えず参加できる場所として、皆様の参加を楽しみに待っています。

そして最終的には「UXってよくわからないし難しそう」という気持ちをUX探検隊で解消した人が、UX定例会にも気軽に自主的に参加するようになったら理想だなと思っています。

さいごに

UX探検隊は始めたばかりの試みでまだまだこれからです。課題も多いですが試行錯誤しながら今後も継続していくつもりです。
実はUX探検隊以外にも自主トレを始めやすくする企画を準備中ですので、社内の方はどうぞお楽しみに。
社外の方へは、また機会があれば何かの形でお伝えできたらと思っています。

それでは!


明日の記事は the96 さんです!