はじめに
モバイルファクトリーは、21 年度から完全リモートワークに移行しています。
リモートワークではコミュニケーション不足に陥りがちです。まだ会社に慣れていない、社員の顔と名前が一致していないような状態にある新卒のエンジニア達はなおさら、コミュニケーションに困難を感じるのではないかと想像されます。
リモートワーク下でも、新卒エンジニア同士 / 新卒エンジニアと先輩社員 がコミュニケーションしやすい状況を作りたい!
というわけで、今年の新卒技術研修を担当しました(id:kaidan388)が、コミュニケーションしやすい状況作りのために新人技術研修で行った工夫について説明します。
端的にいえば、コミュニケーションするきっかけを増やすことに注力して、内容を組みました。
具体的には、新人技術研修に以下の工夫を盛り込んでいます。
- 朝会と夕会で雑談タイムを作り、互いのことを話す
- 幅広い社員を募った「座談会」を定期的に開催し、多くの社員とコミュニケーションする場を用意する
- 研修の参加者には同じ Google Meet の部屋に入ってもらい、参加者どうし相談しやすい環境を作る
- 先輩社員が常に 1 人以上いる Google Meet の部屋を用意し、いつでも相談できる場所を作る
新人技術研修の目的
研修の目的は、新卒エンジニアが開発業務に加わりやすい状態を作ることです。 参加者に対しては、意識してほしい目標として以下の 3 つを共有しました。
- 業務に必要な最低限の技術スタックを身に着ける
- 研修の場だけで全ての技術を使いこなす状態に持っていくことは考えていません
- ここでいう最低限とは「何ができるかをぼんやり知識として知っている/参照すれば使える状態」になることです
- 疑問や課題を言語化・質問して解決する能力を身に着ける
- 前述の通り、技術研修で業務に必要な知識を全てインストールするのは不可能です
- そのため、未知に遭遇した場合に、周りの環境を利用しつつそれを解決する能力が非常に重要になります
- いわゆる"聞く力"です
- 仕事を円滑に進められるための関係性を構築する
- 上記に関連しますが、聞く力を鍛えるだけでなく新人が気兼ねなく質問・相談できる環境を作ることも研修の狙いとしています
また、この中でも、3 つめの「仕事を円滑に進められるための関係性を構築する」が重要だよ、という点を繰り返し強調して伝えました。 これは、冒頭でも述べたコミュニケーションするきっかけを増やしたいという意図を、参加者にも意識して欲しかったからです。
新人技術研修の具体的な内容
以下のようなスケジュールで進行しました。
日程 | 概要 | 詳細 |
---|---|---|
4/11 | 研修キックオフ | - 研修キックオフ - 技術スタック紹介 - 開発環境整備 - Git/GitHub 研修 |
4/12 ~ 4/25 | サーバサイド研修 | - MySQL - Perl 研修 - AWS 研修 |
4/26 ~ 5/9 | フロントエンド研修 | - JavaScript 研修 - Vue 研修 - TypeScript 研修 |
5/10 ~ 5/15 | Web サービス開発 | ユーザー認証付きの掲示板を作る |
5/16 | 発表 | 社員に、開発した掲示板と研修の内容をスライド発表する |
モバファク では基本的にどのエンジニアもフロントとサーバの両方を扱うことが多いので、研修でも両方を満遍なく扱うようになっています。
なぜコミュニケーションのきっかけを増やすか
研修の目的である新卒エンジニアが開発業務に加わりやすい状態を作るために一番重要なことは、コミュニケーションの経験を通して先輩社員との関係性を作っておくことだと考えたからです。
例えば、同期や先輩社員との関係性があまりないまま開発業務に加わってしまい、質問や相談がうまくできずに開発効率が落ちてしまう、というのは割とよくある話なのではないかと思っています。 逆に、技術研修中でコードの書き方を学んだとしても、その場では必要性を実感しづらいですし、実際必要になった場面では内容を忘れてしまっていることもよくある話です。
実際、自分の入社直後の Slack 上でのやり取りを見返してみると、技術的に難しい実装にぶつかった時相談するのが遅くて、開発に時間かかってしまっている状況はしばしば起きていました。 特にリモートだと、実装で困っている時は自分が声をあげなければ、周りのメンバーが気づくこともできず手助けが遅れてしまいがちです。そういう意味でも、話がしやすい関係性を作ることが重要なのではないかと思います。
個人的には、新卒技術研修という名目ですが技術それ自体はコミュニケーションのきっかけになる共通の話題でしかなく、関係性を作っておくことの方が重要だ、くらいの気持ちで研修の準備を行っていました。
コミュニケーションのきっかけを増やす具体的な工夫
ここまでで、コミュニケーションの経験を通して先輩社員との関係性を作っておくことの重要性を述べました。
ここからは、どのようにしてコミュニケーションするきっかけを増やしたか、具体的な工夫について 4 点紹介します。
朝会/夕会の雑談タイム
毎日、出勤直後と退勤直前に、15 分ずつ朝会/夕会を開きました。
主な目的は、研修の参加者の進捗を聞き、必要であればサポートなど行うことです。 また、時間が余ったら雑談をしてお互いのことを知るための時間に当てました。
雑談では、よく見ているコンテンツの話や、今日食べた朝ごはんの話などをよく話しましたね。 リモートワークの影響で参加者が全国各地に住んでいるので、たとえば全国区だと思っていたパンが実はローカルでしか売られていなかったりと、住んでいる地域の違いに関する話題がよく盛り上がりました。
概ね良かったのですが、研修終盤になってくると、話題がだんだんと尽きてくるのがちょっと難点でしたね......
幅広く社員を募った「座談会」
事前にエンジニアの社員を広く募っておいて、毎回違うメンバーをゲストとして招いて技術に関する話をする座談会を開きました。
座談会は 1 回 40 分ほどです。 まずゲスト社員からの簡単な自己紹介を行い、次に研修の参加者からゲスト社員に研修の内容に関する質問を行った後、最後に事前に考えてもらった「先輩社員から新卒に伝えたいこと」を話していただきました。 ゲスト社員は、できるだけ様々なチームから満遍なく呼ぶようにしています。
この会もコミュニケーションのきっかけを増やすことが大きな目的になっていて、自己紹介や質問を通して、ゲスト社員と研修の参加者が互いの興味関心などを知るきっかけになるように設けたものです。
研修の内容に関する質問では、JavaScript のこの機能が便利そうですが、これはプロダクトのコードでも使われていますか?など、研修の内容と実際の業務を結びつける情報を聞くようなものが多かったです。
研修後に効果について新卒メンバーに聞いてみたところ、モバファク で働いている社員が全体的にどんな雰囲気の人が多いか把握できて良かった、というようなコメントをいただきました。 ゲスト社員を様々なチームから満遍なく呼んでいた効果があったようです。
また、「先輩社員から新卒に伝えたいこと」が新卒メンバーからの評判がよく、働く際の心構えやリモートワークで便利なアイテムなどの話について、聞けて良かったという感想がありました。
研修の参加者同士の相談部屋
事前に Google Meet の部屋を作っておいて、研修の参加者には研修中その meet に入って作業してもらいました。
これは、困り事があったときに同期同士で相談しやすい状況を作ろうという意図です。業務が始まった後で一番話をしやすい他人は同期だと思うので、ここの関係値を積んでもらうことを目指していました。
ただ、研修の序盤はあまりうまく行かず、会話があまり発生していない状態になっていました。 研修の参加者は 5 名だったのですが、5 名を 1 部屋に入れるにはちょっと人数が多かったのかもしれません。 研修の中盤で、新卒同士コミュニケーションして欲しい旨を伝えた上で 2 人部屋と 3 人部屋に分けるとうまくコミュニケーションが起き始めたようで、朝会や夕会の雑談でその日話した内容を聞くようになりました。
研修後に効果について新卒メンバーに聞いてみたところ、研修中に雑談することで気が抜けるタイミングを作れた、もし相談部屋がなかったら辛かっただろう、といったコメントをいただきました。
また、新卒同士コミュニケーションして欲しい旨を伝えたことと、2 人部屋と 3 人部屋に分けたことの両方が、コミュニケーションに作用していたようでした。 2 人部屋と 3 人部屋に分かれてもらった後、今日の作業について軽く話したりと、コミュニケーションのきっかけを作るための雑談を互いに行っていたとのことです。
新卒メンバーはまだ互いに相手のことを深く知らない状態なので、相談部屋に入ってもらった後どう会話してもらうかをある程度イメージして、人数の調整や朝会/夕会のファシリテーションを行うと、初めからスムーズに進んでいたかもしれません。
先輩社員がいる相談部屋
研修の参加者が参加している GoogleMeet とは別に、先輩社員がいつでも 1 名以上いる相談用の Google Meet を用意しました。 これは何か困り事があったらそこの部屋に入るだけでいいという状態を作る意図です。研修担当者にはいつでも質問していいよと伝えてるとはいえ、実際 Slack 上でメンションをいきなり飛ばすことにはハードルがあるかと思うので、そこを解消しようと考えました。
大体 1 日 1 回以上利用があったので、質問しやすい状況を作るという狙いは達成されたかと思います。
研修後に効果について新卒メンバーに聞いてみたところ、新卒同士の部屋でもある程度疑問は解消できていたものの、たとえば実装方針の相談など自分たちだけでは決めきれない相談がある時、相談しやすくて助かったとコメントをいただきました。 質問しやすい状況を狙い通りに作れていたのではないかと思います。
また、先輩社員と話すきっかけが増えたかと聞いてみたところ、増えはしたが、疑問を聞いて解消するための会話に終始するので、関係性を作るきっかけにはなりづらそうとコメントをいただきました。 先輩社員がいる相談部屋の取り組みは、関係性の構築というよりは、心理的に安心して作業できるようになるといったメリットの方が大きいようです。
まとめ
24 年度の新人技術研修では、新卒エンジニアが開発業務に加わりやすい状態を作ることを目的に、メンバー同士が関係性を構築することを重視して内容を作りました。 この記事では、コミュニケーションするきっかけを増やすための工夫を 4 点、紹介させていただきました。その結果、
- 座談会の開催によって、新卒メンバーが モバファク で働いている社員にどんな雰囲気の人が多いかを把握する機会を作れた
- 研修の参加者同士の相談部屋によって、新卒メンバー同士が雑談するきっかけを作れた
といった効果を得られました。
また、先輩社員がいる相談部屋によって、心理的に安心して研修が受けられる環境を作ることができました。
今後の課題としては、研修参加人数に応じて、うまく会話が起きるよう部屋の設定を、研修開始前に考えておくようにしたいです。 これは研修参加者にインタビューをして感じたことなのですが、入社直後の状態だと、仕事中にどのくらい人と雑談しても許されるのかという感覚がよくわからず、雑談しづらいという面があったようです。 人数の調整もそうですが、コミュニケーションしてほしい旨を伝えたり、ファシリテーターどうしが雑談してる姿を見せたりと、どういうコミュニケーションをとってほしいかがわかるような説明を追加したいですね。
研修終了から半年以上経った後の記事公開になってしまいましたが、この内容が 25 年度以降の新人研修を考えている誰かの役になったなら幸いです。