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私が 1on1 でしていること

こんにちは。駅メモエンジニアの id:dorapon2000 です。

今回は自分自身がメンター側として実施している 1on1 について、どのように実施しているのかご紹介しようと思います。

1on1 のやり方はメンターとメンティーの組み合わせで千差万別です。同じ会社内でも人それぞれです。その具体的なやり方にまで踏み込んだ記事があまりないと感じているため、自分で書いていきます。なお、自分の 1on1 は 「ヤフーの 1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法」がベースになっています。

言葉の定義

ここでは、以下のように言葉を定義します

  • 1on1
    • メンティーの成長のために設けられるメンターとの会話の時間
    • 最低月 1 回あり、人によっては毎週や隔週で実施する
  • メンター
    • 1on1 の聞き手
    • 上司や先輩、メンター制度のメンター
  • メンティー
    • 1on1 の話し手
    • 部下や後輩、メンター制度のメンティー

モバファクの 1on1 の目的

モバファクでは 1on1 の目的は多義的であるとして 5 つ掲げています。

  • ① 関係性の強化
  • ② 行動と学習の促進
  • ③ 意欲の喚起
  • ④ 情報共有と促進
  • ⑤ 問題解決の促進

ひとことで言えばメンティーの成長です。

1on1 で自分が大事にしていること

3 つあります。

  • 1on1 はメンティーの時間である
  • 1on1 はメンターの時間でもある
  • 1on1 初回

1on1 はメンティーの時間である

1on1 はメンティーのための時間であるという意識を大事にしています。 理想を言えば、メンティー自身が 1on1 をどのように進めたいかフォーマットを考え、話したいことを話し、1on1 の頻度を決めてもらいたいです。

メンターはメンティーが自分にあったフォーマットで 1on1 を進められるよう選択肢を与え、メンティー自身が気付いていない考えを深堀ってあげ、定期的に 1on1 の頻度は今のままでいいか聞いてあげます。

1on1 では、メンティー自らが考え内省しながら物事を進めていく体験が成長につながると考えています。例えるなら、このリップクリームいいよと教えてもメンティーがリップクリームを買うことはないでしょう。そうではなく、メンティー自身が唇のカサカサを気にしていることを認識して、わからないなりにリップクリームを買って試して失敗しながらコレがいいと思うことが大事です。

1on1 はメンターの時間でもある

1on1 はメンターの時間であることも忘れてはいけません。1on1 の中でどのようにティーチング・コーチング・メンタリングをしていくのか、その使い分けはどうするか、考える必要があり、メンター自身の成長にも繋がります。もちろん、メンティーの学びはそのままメンターの学びにもなります。

1on1 を通して、1on1 の目的はメンティーではなくメンターにも向いていることに気付かされます。

1on1 初回

自分は初回の 1on1 はメンターとメンティーの関係を決め、その後の 1on1 の内容も大きく変わる大切な時間だと考えています。そのため、自分は以下の 3 点について初回に説明します。

  • ① 1on1 の目的と大事にしたいこと
  • ② あなたの協力が必要であること
  • ③ メンターは聞き手だということ

① はここまでに書いた記事の内容のことです。隠す必要はないので、素直に伝えます。① を踏まえると ③ も自然かと思います。

② はメンター側の気持ちが伝わるので、メンティーに 1on1 を自分ごととして考えてもらいやすくなると思っています。1on1 はメンターがメンティーを引っ張り上げるものではなく、1on1 というプロジェクトを成功させるためにお互いメンバーとして協力するものだと説明します。

今使っている 1on1 のフォーマット

現在 1on1 をしているメンティーから許可を頂いたので紹介します。

- 体調 (10 段階)
- 半期目標の進捗振り返り
- ネクストアクションの振り返り
- うまくいかなかったこと・もっとよくなりそうなところ・うまくいったこと・その他に話したいこと
- ネクストアクション

ちなみにこれは、初回 1on1 に私がベースとして出したフォーマットから、お互いに話し合いながら少しずつ成長させたものです。最初は以下のフォーマットでした。

- 体調 (10 段階)
- うまくいったこと
- うまくいかなかったこと
- その他
- ネクストアクション

いくつか変わっていますね。

体調

最も大事なセクションだと思っており 1on1 に外せません。仕事 < 健康です。

体調は 10 段階で自己評価してもらいます。なぜ 10 段階かというと、5 段階ではだいたい 4 に収まってしまい、気づきたい変化に気づけなくなってしまうからです。先週の 7 と今日の 8 の違いは偶然なのか心当たりがあるのか、深堀っていきます。

体調以外に、最近の仕事量や心理的な負担があるかどうかなども併せて聞いてあげます。回答によっては、上司に相談したり業務調整を行います。

半期目標の進捗振り返り

モバファクでは半期ごとに各自目標を立てて、その目標を達成するために行動することが期待されます。その進捗を話すセクションです。

ネクストアクションの振り返り

毎回の 1on1 の最後に、1on1 を通して気付いた学びをどのような具体的行動につなげるかを考えてもらっています。考えっぱなしにならないようにと、前回考えたネクストアクションはどうなったか振り返りをするセクションを設けました。

うまくいかなかったこと・もっとよくなりそうなところ・うまくいったこと・その他に話したいこと

初回に提示したフォーマットのうちの 3 項目をぎゅっと 1 つにまとめて「もっとよくなりそうなところ」を追加したセクションです。

メンティーがうまくいったことを話しづらいという気付きがあったため、「もっとよくなりそうなところ」と言い方を変えて追加しています。

うまくいったことを先に話すと、うまくいかなかったことを話す時間が圧迫されてしまうという気付きから、うまくいかなかったことを先に話せるように先頭にもってきました。

ネクストアクション

ここまでの 1on1 の内容を踏まえて、メンティーにネクストアクションを考えてもらいます。どのようなネクストアクションでもメンティーが考えたものであれば尊重したいと思っていますが、以下の点に注意しています。

  • 実現が心理的に困難なものでないか
    • 例:本を毎日 1 ページ読む
    • ⇒「毎日 1 行読むという目標ですら、人によっては案外難しかったりすると思いますが、実現する自分を想像できますか」
  • 抽象的過ぎる目標
    • 例:ミスをしないように気をつける
    • ⇒ 「抽象的すぎると行動しづらいので、状況を絞ったり、気をつけるための手順を書いたりしてほしいです」
    • もちろん抽象的である理由をメンティーが持っていれば OK
  • 具体的すぎる目標
    • 例:次の勉強会では率先して議事録をとる
    • ⇒ 「抽象的にしてより広いネクストアクションにするのはどうですか」

あるいは、学びではあるけれど、メンティーがネクストアクションをうまく言語化できず書かなかったというケースもあります。その場合、書かないよりは行動が変わったらラッキーくらいの気持ちで「〇〇を気をつける」と書くこと、をよく提案します。

  • 言語化しづらいネクストアクション
    • 例:バグがありそうという直感が正しかったエピソードのネクストアクションを書かなかった
    • ⇒ 「直感を大事にするくらいのふわっとしたネクストアクションでもよいので書いておくと、なにか行動が変わるかもしれませんよ」

全体的に、メンティーが出したネクストアクションの主旨が変わらないことは意識しています。

例:本を毎日 1 ページ読む

本ではなく勉強会に参加するのはどうですか?は主旨が変わってしまうので避けています。

1on1 の中でのやりとり

1on1 でよくありそうなシチュエーション別に具体的なやりとり例を示します。実際のやりとりではなく、説明しやすいようにそれらしい話題で自分が創作したものです。 また、最初に記載した通り 1on1 のやり方は千差万別なので、このやり方がよいかは人によると思います。

A:メンティー
B:メンター

お休みの取り方がわからない

A「お休みの取り方がわかりません」
B「お休みはマネージャーにメンションして、カレンダーに登録してますよ。このドキュメントに書いてあります。このドキュメントはこのインデックスドキュメントから辿れるので覚えておいてください。」

典型的なティーチングのやりとりです。社内・チームルール、所属したてで調べ方すらわからない内容についてはティーチングをします。意識するのは、似たような状況になったとき、どうすればいいのか How も教えることです。

魚を与えるだけではなくて釣り方も教える、と自分は意識しています。

最近見積もりの精度が高くなっている

A「最近見積もりの精度が高くなっていると感じています」
B「いいですね。具体的にはどんなタスクでそう感じましたか?」
A「そうですね... Aのプロジェクトを進めるときにガントチャートを組みました。中盤に差し掛かっても、スケジュール通りに進んでいるので、これは精度が高かったからだと思っています」
B「なるほど、これから懸念することはありますか」
A「進捗通りなのでないです。強いて言えば、今後の動作確認次第で修正箇所が多くなったときに、ガントチャートの引き直しが発生するかもしれません」
B「そう思ったのはコレまでにもそのようなことがあったからですか」
A「はい、前回のプロジェクトで動作確認後の修正が予想より多くて大変でした」
B(ちょっと黙ってみる)
A「...なので、振り返りのときに動作確認を2回に分けるようネクストアクションを出したんでした」
B「よさそうですね。効果はありそうですか」
A「...それが、2回に分けるのを入れ忘れていました」
B「おぉ、そうですか」
A「忘れないように、ガントチャートのテンプレート作ってメモしておきます」
B「はい、お願いします。」
B「では、ちょっと視点を変えてもらいたくて、精度が高い見積もりをすることによるデメリットはありますか」

A「最近見積もりの精度が高くなっていると感じています」
B「いいですね。具体的にはどんなタスクでそう感じましたか?」

1on1 で褒めることは大事ですね。隙あらば褒めていきます。「いいですね」「よさそう」「考えたことなかったです」「チームの人たちきっと喜んでますよ」

具体的なエピソードを掘り下げていきます。

A「そうですね... A のプロジェクトを進めるときにガントチャートを組みました。中盤に差し掛かっても、スケジュール通りに進んでいるので、これは精度が高かったからだと思っています」
B「なるほど、これから懸念することはありますか」

少し別の視点を持ってもらうために、良かった話から懸念点へとベクトルを曲げます。さらに掘り下げるような質問も考えられます。「ここでの精度とは期間のことですか、あるいは見積もりのことですか」「ガントチャートはどうやって組みましたか」

A「進捗通りなのでないです。強いて言えば、今後の動作確認次第で修正箇所が多くなったときに、ガントチャートの引き直しが発生するかもしれません」

今回の例では A さんが「強いて言えば」で文章を続けてくれましたが、続けてくれなかったときはメンターから「強いて言えば?」と促すこともできます。

B「そう思ったのはコレまでにもそのようなことがあったからですか」
A「はい、前回のプロジェクトで動作確認後の修正が予想より多くて大変でした」
B(ちょっと黙ってみる)

少し黙ってみると続けて話してくれることはよくあります。もちろん、メンティーの目が泳いだりして考えているように見えるときも黙るのは有効です。ただし、沈黙に耐えられる長さは人それぞれなため、注意が必要です。自分は経験ないですが、相手が居心地の悪さを示したら「ごめんなさい、ちょっと考えてもらうために黙っていました」と素直に伝えるとよいかと思います。

A「...なので、振り返りのときに動作確認を 2 回に分けるようネクストアクションを出したんでした」
B「よさそうですね。効果はありそうですか」
A「...それが、2 回に分けるのを入れ忘れていました」
B「おぉ、そうですか」

1on1 の中でネクストアクションが実行されないことはよくあることです。責めてしまうと次から失敗の話はメンティー自身から出なくなってしまうかもしれません。事実を把握したというリアクションが大事だと思います。

A「忘れないように、ガントチャートのテンプレート作ってメモしておきます」
B「はい、お願いします。」
B「では、ちょっと視点を変えてもらいたくて、精度が高い見積もりをすることによるデメリットはありますか」

一見デメリットがないようなことに対してデメリットを考えてもらう質問を自分はよくします。ここからメンティー自身でも気づかない発見がよくあります。視野の広さを持ってもらいたいですね。

注意したいことは、この質問はメンターのスタンスを示しているわけではないことを理解してもらうことです。今回の例では、別にメンターは「精度の高い見積もりはよくない」と思っているわけではありません。あくまで視野を広げてもらうための 1on1 中の質問に過ぎません。

朝会の議事録をとるようにしたい

A「毎日の朝会で内容を忘れてしまうことがあるので、議事録を取るようにしたいです」
B「いいかもしれませんね。でも今まで議事録を取っていなかったということは、他のメンバーはどうしていたと思いますか」
A「わからないです。朝会で話し合う内容は簡単なものなので、覚えてしまうのかもしれません」
B「このあたりはチーム全体で話し合えるとよさそうです。今度朝会で提案してみるのはどうですか」

これは 1on1 の中で業務の相談があったシチュエーションです。もちろん 1on1 では話しづらいことを気軽に話してもらえる場として活用するのも大切です。しかし、1on1 が業務の相談ばかりになってしまったら目的とずれてしまいます。適度に切り上げて、業務の相談はより適切な場が別であることを示してあげます。

最近チームの動きがぎこちないと感じている

A「最近チームの動きがぎこちないと感じています」
B「ぎこちない?」
A「はい、朝会やミーティングが淡々と進みすぎているように思います」
B「それを他の人もそう感じているいないに関わらず、その感覚や気持ちは大事にしてもらいたいです」
B「ぎこちないということはAさんはポジティブ、ネガティブで言うとネガティブに感じているということですよね」
A「うーん、そうなんでしょうけど、一概に悪くないとも思っています。なぜなら、必要最低限の時間でミーティングが完了できて、それは本来目指すべき姿だと思うからです」
B「ほうほう。でもAさんは部分的には問題だと考えているわけですよね」

A「最近チームの動きがぎこちないと感じています」
B「ぎこちない?」

気になるキーワードを拾って話を促します。もちろん、他にもいろいろな返しが考えられます。

A「はい、朝会やミーティングが淡々と進みすぎているように思います」
B「それを他の人もそう感じているいないに関わらず、その感覚や気持ちは大事にしてもらいたいです」

これは 1on1 というよりも単純に自分が大事にしていることです。もしそうでないとしても、感情はあらゆる原動力なので注目することはいいことだと思います。

B「ぎこちないということは A さんはポジティブ・ネガティブで言うとネガティブに感じているということですよね」
A「うーん、そうなんでしょうけど、一概に悪くないとも思っています。なぜなら、必要最低限の時間でミーティングが完了できて、それは本来目指すべき姿だと思うからです」
B「ふむふむ。でも A さんは部分的には問題だと考えているわけですよね」

感情をポジティブとネガティブに分類してもらう質問も自分はよくやります。感情は複雑なので、自分が誤った想定で質問を続けてしまうことを防止できます。また、感情にゆっくり向き合う時間というのは日頃の生活でないことなので、ぜひメンティーにもいろいろ考えてもらいたいですね。

1on1 定期的な振り返り

3 ヶ月ごとくらいにメンターとメンティーの 2 人で簡単な 1on1 の振り返りをします。以下のようなことを話し合います。

  • 1on1 の頻度は今のままでいいか
  • 1on1 のフォーマットは今のままでいいか
  • よりメンターにこうしてもらいたいという提案はあるか
  • メンティーのキャリアのすり合わせ

1on1 の中ではキャリアについても考えるきっかけを作っています。メンティーの成長にあわせて、より技術志向な 1on1 にしたいなどないか、すり合わせをします。メンターがメンティーにタスクを割り振る立場であれば、目指すキャリアにあわせてタスクに挑戦させることができます。

まとめ

ずいぶんと長くなってしまいました。これから新年度を向かえて、1on1 を任される方がいらっしゃるかもしれません。1on1 の内容は前述した通り千差万別だと思いますが、参考にしていただけたら幸いです。

  • 1on1 はメンターとメンティーのための時間
  • 1on1 の初回でそれを伝える
  • 1on1 のフォーマットをお互いに考えて成長させる
  • 1on1 のやりとりに答えはない
  • 定期的に振り返りをする